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ママ、25世紀はくるの?
 私は主人、小4と小1の2人の息子をもつ主婦です。毎日国際部のメンバーとしてセンターに通い学んでいます。
 先日機関紙の編集企画会議の折、今の社会に何を思うかについて話し合う中で、私は思いきって正直な思いを話しました。最近国会で安全保障関連法、改正組織犯罪処罰法など次々と成立していき、不安にはなりますが、心のどこかで「日本は大丈夫ではないか」と思ってしまうのです。まさかこんなに平和な日本で徴兵制を敷くとか、共謀罪について年配の方がまるで戦前のようだと話されるのを聞いても、それは昔のことで今は違うと思い、北朝鮮のミサイルもゲームのようだし、毎日の子育てで精一杯で、まあいいか、と思ってしまうのです。
 そんな私に、理事は「この70余年平和できた日本で生まれ育ち、『何でもある』から始まっているあなただから、リアルに危機感が持てないかも知れないね。今の日本では、そう思うのはあなた一人ではないと思う。大事なことは、そういう意識が社会の流れをつくっているということなのよね」と言われました。「一人ひとりの意識が社会をつくっている」と学んでいましたが、私のこの意識とは結びついていませんでした。「リアルな危機感」と言われ、その前日の小4の息子との会話を思い出しました。息子に突然「ママ、25世紀って来るの?」と聞かれ「来るとは思うけど、でももしかして核戦争になったら来ないかもしれないよね」というと息子は「えっ!僕たち死ぬの?」と聞いてきました。私は内心びくっとして「そういうことになるよね…」と返事を濁しました。そのことを理事に話すと「核が使われたら皆死ぬのよ。それが現実なの。子どもの方が正しく感じているのよね」と言われました。
 自分で「核戦争」と言いながらどこか遠い世界のことと思っていました。目の前の息子が死ぬなんて怖くて言えない自分も見えました。そう考えると「日本は大丈夫」と思うのは、そう思いたいからで、ただ現実を直視できないだけだと思いました。
 その時、ちょうど香港から帰国していた先輩から「私の周りでは、日本は来年徴兵制になるのではないかと噂になっている」と聞いてギョッとしました。外国から日本はそう見られているのだと思いました。
 現実に、今戦場となっている国々は世界中にあり、兵士だけでなく大勢の一般市民、子どもたちがミサイルや爆弾で命を落としています。パレスチナ支部から送られてきた、殺された子どもを抱いて泣き叫んでいる母親の写真をみると、ほんとうに悲しくなります。しかし日本もそうならないとは限らない。たとえ北朝鮮のミサイルを日本の上空で迎撃したとしても、核弾頭だったら、その下に住む私たちはどうなるのか。戦争は昔のことではないと思いました。
 私の母は、旧満州で生まれ、戦後、家族で日本に引き揚げてきました。当時母は3歳で、祖母は2歳の叔父を背負って歩き続けたそうです。途中動けなくなり「私はいいから、あなたは行きなさい」と諦める祖母のところに戻り、手を引いて一緒に祖父たちに追いつき歩いたとのことでした。「あなたのお陰で帰ってこれた」と祖母が言っていたと母に聞きました。
 こうして、どんなに苦しい中でも諦めずに生きて私に命をつないでくれた両親はじめ、先祖がいてくれて今私がいる。そして戦後72年、日本の平和を守ってきてくださった方々のお陰で今があると思うと、私も精一杯生きて息子たちに平和な日本を繋げたいと思いました。
 「一人ひとりの意識が社会をつくる」ということの重さを思えば、社会の実態に目を背けず、自分の意識と向き合い、息子に「25世紀はくるよ」と言える母親になりたいと思います。 
 
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