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インド国会議員 デシュパンデ女史来訪 金子理事長と懇談
 5月11日(水)、インド支部のイエドラ・チナ・シマハドリ教授と、責任者の直子さん夫妻が揃って来日。約10日間の滞在中、創設者野村佳子理事長の墓参、全国講座への参加、金子由美子理事長はじめ本部との間での今後のインド支部活動についてのミーティング等と、密度の濃い日々を過ごした。
 その間、シマハドリ教授がベナレス大学学長時代に出会い、以来、敬愛し続けているというニルマラ・デシュパンデ女史がちょうど来日中であったことから、教授はぜひ女史を金子理事長に紹介したいと願われ、この日の懇談の運びとなった。
 今年76歳になられるというデシュパンデ女史は、長年にわたり非暴力に基づいて新しい社会を建設するガンディー主義の活動、インドの国内外での平和活動を精力的に展開してこられ、その間、国会議長の推薦による12名の国会議員の一人として、2期にわたって務められている。
 1952年からマハトマ・ガンディーの精神的後継者であるヴィノババーエの土地喜捨運動に参加され、喜捨を受けては貧しい人々に土地を分け与え、インド国内4万キロを踏破されたという。その後、貧困層の人々の権利を訴えるサッチャグラハ(真理の把握)運動を推進、インドの非暴力運動へと展開し、現在、数千名の活動家を抱える組織となっている。
 また、平和訓練協会の理事でもある女史の活動は、インド国内はもとより、インド・カシミール問題やチベット問題への関わり、インド・パキスタン兵士の平和運動、ミャンマーの難民支援など多岐にわたる。
 今回の来日は、日本仏教界の古い友人の米寿の誕生会への参加と、女史が今手がけられている二つの大きなプロジェクトへの日本の友人の理解を求めるためであったという。
 プロジェクトの一つは70年前にガンディーが作ったガンディー・アシュラムの土地にある建物を再建して、平和と非暴力のための国際センター、宗派を超えた祈りのセンター、そして、非暴力主義の若者たちのセンターを建設するものである。
 もう一つは、来年が仏陀入滅2550年目に当たる「二五五〇遠忌」で、仏陀が人類のための智慧を説き明かされた徳を顕彰するべく、大きな法要と会議の開催と、今は遺跡となっている世界最古の仏教大学であるナーランダ大学の再興が計画され、女史が遠忌委員長をされているという。
 「滞在を日延ばしましたのは、これだけの活動をお若い理事長が指導なさっていることを知り、ぜひお目にかかりたいと思ったからです」と女史は挨拶を締めくくられた。
 その後、センター紹介のビデオをご覧いただいた上で、金子理事長はまず「穏やかで、皆さんから親しまれる雰囲気をお持ちでいらっしゃいますが、どこからそのような多岐にわたるプロジェクトを推進されていくエネルギーが出てくるのか、どのような思いからそうした活動をされているのか、伺いたいと思います」と尋ねた。
 デシュパンデ女史は「すべては神の恩恵のもとにさせていただいています。神への深い信仰が内的動機をもたらしてくれますし、ガンディーとヴィノババーエの哲学が私を支えてくれています。神は一人ひとりを通して社会のために願っていることを教えてくださり、私はそれを忠実に行っているのです」と答えられた。
 金子理事長は「野村理事長はよく『なぜこうした活動をするようになったのか、自分でもよくわからないのよ。何かに導かれてさせられてきた、という思いしかない』とおっしゃっていました。今日の出会いも、何かのお導きによっていただいた、と思いました」と応えた。
 その後昼食となり、菜食主義者の女史のために、メンバー手作りの料理が用意された。女史は「作ってくださった方の心が伝わってきます」とたいへん喜ばれた。
 午後もさらに懇談が続き、センターの幼児教育部の話になったとき、女史は「敵とは何かも知らない子どもたちに、大人が敵という概念を教えてしまったり、信仰篤い父親が母親を怒鳴って矛盾を感じさせたりする」と、子どもへの大人の関わりの重要さを話された。
 それに対して金子理事長は「私たちは『子どもの教育はいついかなる場合にも親の自己教育である』と学び、既成の教育観の転換を試みています。もちろん親は子どもを教える立場にもあるわけですが、子どもから学ぶという視点が必要だと思います」と語った。
 そして、「平和活動に対するインドの若者たちの意識はいかがでしょうか?」と伺った理事長に、女史は「若者にはいろいろ問題があるかもしれないが、彼らがわかるような適切なアプローチをとることが大事です」と答えられた。
 理事長は「センターでも、子どもたちに人間がいかに尊厳ある存在かを野村生涯教育論に基づいて話していくと、子どもたちは純粋な心でそれを受け止め、自分がいかに大切な存在か、命が尊いかを理解します。“こうしなければいけない”というアプローチではなく、本来のあるべき道筋を話したとき、子どもたちは受け止めるのだと思います」と述べた。
 また「インドでは長い歴史を通して受け継がれてきた価値観が急速な社会変動の中で変化しつつあり、大家族主義も変わろうとしている。日本での高齢者問題はどうですか?」との女史からの質問に対しては、同席したセンターの理事から「『高齢の親の介護が大変だ』と言っていた人が、野村生涯教育の学習を通して命の繋がりを知り、『かけがえのない親の介護ができて幸せだ』と言うように変化している」と、具体的ケースをあげて説明がなされた。
 理事長はさらに「高齢化問題は長い歴史の中で人類が初めて直面している難しい問題だと思います。人が寄り合い、協力し合って生活が成り立っていた時代には、背景を共有し易かったと思いますが、急速な科学の進歩が一人で生活することを可能にする中で共有するものがなくなってきている。
 医療の進歩が高齢化を進め、少子化によりそれを支える側が激減しています。この問題は私たちの未来の問題でもあります。
 時代背景を踏まえてこの問題を捉える視点を野村理事長は教えてくださいました。
野村理事長は、子どもと高齢者をほんとうに大切にされました。ですから、センターの高年部の方々はいつもエネルギーに溢れ、すべてから自分を学ぼうとされています。その姿に、私たち若い者が尊敬の念を抱いております」と述べた。
 デシュパンデ女史は最後に「皆さんが素晴らしい活動をしていらっしゃることに驚きました。今の時代に大切な希望を世界に与えていらっしゃることがよくわかりました」と述べられた。 
 金子理事長は「インドで、また世界で平和活動を推進されている方と、このように目的を共有できたことを心から感謝いたします」と述べ、懇談は終了した。
 
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